測光量とは、照度や光束など光に関する数量の総称である。実は測光量は純粋な物理量ではなく、心理物理量という数量に分類される。
心理物理量とは、ある(純粋な)物理量を人間が実際にどう感じるのか示す数量である。ということは、心理物理量には対応する純物理量が存在する。測光量と対応する純物理量は、放射量と呼ばれる。
本稿では測光量を、放射量との関係に重点を置いて解説していきたい。
「測光量」という言葉は、単なる総称
照度(illuminance)は読んで字のごとく「照らされ度合い」であるが、照明計画の実務において最もよく使われる光の単位であろうと思う。光束(luminous flux)も、ルーメン数という言葉で、照明器具のパワーとして比較的使われやすい。
測光量(そっこうりょう/photometric quantity)というのは、これら照度や光束といった光の単位の単なる総称である。測光量それ自体は単位をもたないし、光のふるまいを表現することもない。
測光量と放射量の関係
測光量は純粋な物理量ではない。心理物理量という数量に分類される。
心理物理量とは、ある(純)物理量をヒトが実際にどう感じるのか示す数量である。ということは、心理物理量には対応する純物理量が必ず存在する。測光量と対応する純物理量が、放射量(ほうしゃりょう/radiometric quantity)と呼ばれる。
「放射量」という言葉も、「測光量」と同様に単なる総称である。放射量というくくりの中に、放射束や放射照度といった数量が含まれる。
測光量の1つである光束は、放射量の1つである放射束と対応する。光度は放射強度に、輝度は放射輝度に…といった具合で、測光量にはそれと対応する放射量が存在するのである。
測光量と放射量の違い
なぜ、似たような数量が2種類あるのかという話である。
光というのは電磁波の一種である。たまたま眼に視える電磁波を光という。そういう意味で、光は可視光とも呼ばれる。
放射量は電磁波のパワーである。一方、測光量は可視光のパワーである。これが放射量と測光量の根本的な違いである。
なぜ電磁波をそのまま可視光として扱えないかというと、それは下記のようなヒトの眼の性質が理由となる▼
- ヒトには視えない電磁波がある(※1)
- 視える電磁波の中でも、その感じ方に違いがある(※2)
電磁波と可視光をいっしょくたに考えることはできない。つまり、電磁波の数量である放射量では、ヒトの感じる明るさを測れないのである。
そういうわけで、測光量というヒトの感じる明るさを測るのに便利な数量が生み出された。といっても、ゼロから生み出されたわけではなく、放射量に対して数学的処理をして変換したものが測光量となる。「数学的処理」と書いたが、突き詰めれば単なる掛け算である▼
放射量 × ヒトの光の感じ方 = 測光量
このように、測光量は「ヒトの光に対する感度」を含んだ数量であり、このあたりが測光量を心理物理量と呼ぶ所以である。放射量という物理量をヒトがどう感じるか(どう視るか)を示す数量が測光量なのだ。
測光量がヒトの感覚を含んでいるということは、実務で照明計画を行っている方も、あまり普段から意識することのない内容であろうと思う。しかし、これは存外、意義深い話だったりする。興味のある方は、測光量が心理物理量であることの意味についてを御覧頂きたい。
(※1) 紫外線を思い浮かべてみると理解しやすいかと思う。紫外線も可視光と同様に電磁波の一種であるが、ヒトには視ることができない(視えたら紫外線対策がしやすくなったりするのだろうか?)。
(※2) あまりいい例が思い浮かばない。日常生活でこれを感じることはないと思うが、実はヒトの眼が感じる明るさは、光の色によって異なる(小難しく言えば、波長によって感度特性が異なる)。このあたりの詳細は別稿で述べる。
コメント
[…] 前稿(測光量とは何か)にて、 […]
[…] 測光量は物理量ではない 測光量は純粋な物理量… 測光量とは何か […]